自然写真家 【小池 清通】

砂丘写真 【小池 清通】
 写真への思い
 プロファイル
 分岐点
 コロラドプラトー
 写真とは
 オリジナルプリント
 写真集・書籍
 米国撮影ツアー
 アーカイブ
  撮影裏話
 エッセイ
 大自然に思う
 潜在的な力
 ひとりごと
 展示会・講演会
 連絡先
 リンク
 フロントページ
 ENGLISH PAGE

 訪れるものとして

                                                 [ 目次ページに戻る ]

 訪れるものとして

 2009年の初夏は例年よりも降雨量が多く、乾燥が激しい砂漠地帯にしては水分に恵まれている。その恩恵を受けて植物たちが、私が今までに見たことのないような勢いで葉を伸ばし広げて賑わっている姿は力強くエネルギッシュである。大砂丘を望むサンドシート地域はグラスランドとも呼ばれ、芝草などを含む高山砂漠性気候に順応した植物圏が形成されているが、起伏をもって横たわるこの広大な地域の砂面に様々な植物が生えている。

 限られた「時」を感じて開花するサボテンやヤッカ Yucca の花が彼方此方にみえ、砂漠に華をみる思いをしつつ、雨が多かったからといって乾燥が厳しくないわけではなく容赦なく私の手の平と甲の間の皮膚のラインに粉吹き芋のように白く乾燥して細かくはがれる皮膚層をみながら、日焼けして刻々と変化する甲の部分と平の部分のコントラストの広がりに、改めてこの地のコンディションを痛感しながら撮影をさせてもらっていた。

自然保護地域での撮影には許可が必要 サーカスビートル (Eleodes hirtipennis) などの甲虫の姿や、ハッパーと呼ばれるバッタたち、夜行性で目撃することがなかったカンガルーラットの子どもを足元で発見したり、吹き荒れる風と吹き飛んでくる砂や埃を浴びながら、この地のエネルギーを体一杯に感じていたが、風が弱まると突然どこからともなく現われる蚊の集団に襲われた。その数は半端なものではなく、夏でもジーンズに登山シューズ、長袖にウインドブレーカー、そして耳を保護するためにかぶる布や帽子の装備にも関係なく、肌が出ている手の甲や手首、顔に刺す瞬間まで気づかれないように見事なアプローチと着地をしてくる。汗を感じるのだろうか、それとも、吐息に含まれる二酸化炭素が彼らをよぶのだろうか。虫除けスプレーを塗っているにも関わらず、地肌への襲撃は激しい。そのうちにウインドブレーカーや布を通してさえ刺してきたからたまらない。耳に痒みが走り出し、頭にまで毒を置き土産にしていく彼らのパワーには平伏してしまう。

 これだけ痒さに悩まされ、撮影後の数日間も赤くはれた数十箇所(もっとあるかもしれない)の刺し傷が、彼らの生息域に入ってきたパスポートの押し印のように残る時間は、痒さという意味では大変なものがある。しかし、私が撮影地と決めて足を踏み入れているこの地域が、私を受け入れてくれているという霊性の域における感覚とはべつに、訪れるものとしての覚悟や礼儀のようなものは必要だと思っている。その生態系に生きるものは、種の保存のために精一杯生きている。たとえば蚊にとって獲物となる「訪問者」がいたならば、血を頂くのは自然の摂理である。訪問者の立場からすれば、訪れるものとして献血させてもらったと思った方が、自然という大きな空間で同等に時間を過ごすという意味において、撮影以前の心の位置を感じるために必要なものではないかとさえ思えている。自然体というもの。それは、自然そのものの中でのひとつの生物としての自分もしっかりと認識し、他の動植物の存在も尊重する心の位置であると思う。

 それにしても痒い。

 在米日本人写真家: 小池清通 - アメリカ合衆国コロラド州をベースに活動する写真作家
               砂漠写真、砂丘写真を主体に大自然とのまじわり、つながりを写真を通して紹介

 

 
ページのトップへ



写真作家 小池清通 コロラド事務所
「自然とつながる時」
Kiyomichi Koike Photography
10167 E. Fair Circle, Englewood, CO 80111-5448 USA
 TEL:720-489-9327 / Fax:720-482-9926 / E-mail: nature@usa-japan.com