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ひとりごと - 森のエネルギー

 アメリカ合衆国コロラド州在住 在米写真作家が綴るひとりごとシリーズ [もくじに戻る]


 森のエネルギー

  2008年11月初めに帰国予定が入り、帰国時に会って頂ける方々との交信をしているうちに長野県上田市(信州国際音楽村)での講演会の依頼を頂いた。懇意にしているカメラ関係の方々のご好意によるもので、そのご好意が新潟県燕三条での講演会にもつながっていった。

 上田市を訪れるのは初めてのことで、5日に到着した時にご案内頂いた上田城が真田家のものであったことさえ知らなかった。歴史の中でしか知らなかったその土地に足を踏み入れた時に上田城跡の小道を覆う樹木たちが優しく影を伸ばして迎えてくれた。不思議な因縁というのだろうか、真田を滅ぼした徳川家一門の末裔の方を知ることになったのは何年か前のことだが、吉良上野介を「悪」とする側と「英雄」とする側があるように、どの位置から歴史上の人物をみるかによって主観的な位置が変わっていくのは人の常かもしれない。そんな思いがする中、この時期に上田を訪れる機会を頂いたのには私にとってそれなりの重要な意味があった。

 海外に長く住んでいることと、写真家活動を始めたのが海外であったため、帰国時に撮影が出来ることはまずない。「日本での撮影作品に限る」という展示会もあり、海外にいるというだけで作品紹介の場を限定される環境には閉口するところもあるが、あるもの(海外在住であること)に感謝することによって今日まで進んでこれたのが事実である。この上田訪問という有難いご依頼は、紅葉の綺麗な季節に撮影をさせてもらえるチャンスでもあった。別所温泉に宿をご用意頂き、今年夏の米国撮影ツアーに参加された皆さんと再会して心温まる夜を過ごさせて頂いた。宮崎からわざわざお越し下さった参加者のお一人はご夫人も伴われての参加で涙が出る思いがした。宴会の席が一つの空間と化して夏のあのアメリカ中西部で過ごした「時」がそのまま移り居座っているような「宇宙」を作り出していたように思えていた。

 翌朝温泉地域にある安楽寺と常楽寺に寄らせて頂いた時にその森のエネルギーの強さと暖かさを身体で感じることができた。安楽寺は国宝に指定されている八角三重塔で有名だが、その紅葉もさることながら、塔に向かう小道を取り囲む杉の暖かさには常ならぬものがあった。古代から培われ、生き続けている森の精たちが迎えてくれてるような気さえしたのである。流れるように影を写す森の中を走る太陽光は、わずかな隙間を見つけては私に降り注がれた。途中の地蔵たちにも微笑を与えるかのように光が降り注ぎ、そして影を残して去っていった。

 となりにある常楽寺は宗派が違うと伺っていたが、また違った気の流れている寺だった。山の小渓谷から流れる水の流れを尊重し守りながら本堂裏には水溜め風の小さな沼があり、脇の池に流れるように走っている。本堂横に座る地蔵たちは丸みを帯びた現代風にも思える形をしており、微笑ましささえ感じる暖かい笑顔で迎えてくれた。森の奥に続く道の先は昼間でも暗く、かといって湿った陰湿なイメージや気配は全くなく、静けさの中に樹木たちのエネルギーが溢れていた。紅葉する樹木たちを逆光で見上げると目に突き刺さるような鮮やかな色がアピールしてくる。自然の変化を感じて色を変え、冬に備えようと表情をみせる樹木たちを見て季節感を持つことを学んだ私たちは、その変化の中に「美」を感じ、そしてその中に「時」を感じてきた。

 その夜に信州国際音楽村で講演会をさせて頂いた際に私はこう言っていた。「ここは森のエネルギーが暖かく、そして強いですね。先人がこういっています。森が豊かなところは人も豊だ、と。皆さんはいいところで生活されていると思います。」 何の下書きや講演の筋書きもなく白紙の状態でステージに上がった私は、好奇心とそれ以上に純粋な「自然とのつながり」を感じようとする参列者の視線を感じながら、私自身も彼らの一人となって自分自身が何を話し出すか楽しみにしながら話を始めていた。

 休息もなく約2時間の講演はあっという間に終了し、上田の森のメッセージを含めた「時間」を持つこともでた。有難い時間、それは自然とそこに生きる人たちが与えてくれたものだと思っている。

(2008年11月)      *上田での撮影写真紹介*

 在米日本人写真家: 小池清通 - アメリカ合衆国コロラド州をベースに写真作家活動
                砂漠写真、砂丘写真を主体に大自然とのまじわり、つながりを写真を通して紹介

 
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写真作家 小池清通 コロラド事務所
「自然とつながる時」
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