間寛平 アースマラソン 【小池キヨミチ】

写真作家 【小池 清通】
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ひとりごと - 行動の導く力

 アメリカ合衆国コロラド州在住 在米写真作家が綴るひとりごとシリーズ [もくじに戻る]


 行動の導く力

  自分自身の今までの経験からも感じるものがあり「行動をとること」の難しさと大切さはよく分かっている。そして止まることなく流れる時間というものが、私たち一人一人に与えられた命の持続期間において「限られた」流れになっていることも熟知しているつもりである。それも様々な出会いから教えられたものであり、時には悲痛な別れや決別などから学んだものもあったであろう。しかしながら、マイナスに思える経験があるからこそ、プラスの経験の価値が分かるようになるという点において、「嫌な思い」にも価値があるのではないだろうか。

 私の仲間の一人であるK氏から先日連絡が入り渡米するかもしれないと伝えられた。彼には公私に渡りお世話になっており、私にとっては義理返しのチャンスを与えてもらえるものでもあった。しかし、仕事の都合で渡米の数日前にならないと実現するかどうか分からないという課題があった。彼からの確定の連絡を待ちながら月末に向かう4月の予定をみていると、かなりタイトなスケジュールが私にはあった。ところが、彼の滞在予定期間だけは穴が開いているかのように、見事に何も予定が入っていなかったから、私は彼とのコロラドでの再会は必ず実現するだろうと思っていた。

 彼には、渡米する大きな理由が1つあった。それは世界一周を走ってやろうという芸人カンペイ(間寛平)さんの「アースマラソン」の応援だったのである。彼は、カンペイさんが日本を離れる際に応援に行って会っており、「アメリカまで応援に行きまっせ〜。ロスで会いましょう。」と伝えている。カンペイさんもあの独特の口調で「そうか〜、嬉しいなあ。アメリカまで来てや〜。ロスで会えるの楽しみにしとるぞ〜。」なんて言っていたらしい。

 来るべくして来てくれたK氏がデンバーに到着したのは今月24日の夜。フライトの遅延で予定より1時間ほど遅れてコロラド州デンバー国際空港(DIA)に無事到着した。私は、先月の帰国時に彼とは再会していたから、それほど久しぶりという感はなかったが、コロラドでの再会は数年ぶりだったので感無量という思いがあった。宿泊所近くで夕食を共にして、明朝の出発を楽しみにした。

 25日朝、作ってもらったおむすびなどを積み込んでコロラド南部へ向かった。3時間ほど走るとコロラド南部を東西に横たわるUS160号線を走る私たちの姿があった。ラベッタ峠 (La Veta Pass) 辺りで会えるかもしれないという期待であったが、峠には大型バンが一台停まっていただけで、何もなかった。ところがこのバン後部に自転車用ラックがついているのに気づいたので、恐らくサポートカーではないかと思いつつ、峠を越えて下っていくともう一台のサポートカーであるプリウス(シールが沢山貼ってあるので見逃すことはない)とすれ違った。そのまま西進して会えると思ったが(実際にはラベッタ峠旧道を急遽選んで走っていたため)誰の姿もなく走り続けた。実はその道の先にはUS150号線が北に走るべくつながっていて、ブランカの町を通り抜けてそこを北進すると、私の写真撮影のホームグランドであるグレイトサンドデューンズ国立公園がある。私は彼にこの砂漠地帯を見てもらえることがとても嬉しかった。カンペイさんとは帰りに会えるだろうと期待しながら、砂漠地帯を走りぬけ大砂丘に到着した。公園入り口では顔見知りの管理官が笑顔で迎えてくれた。ビジターセンターでは写真集出版、そして同ギフトセンターでの写真集販売でお世話になっているパトリックとクリスにも再会でき、彼を紹介した。その後、実際にデューンフィールドに下りて砂たちにも挨拶をさせてもらった。

 私たちは、帰路にカンペイさんに会えないかもしれないという可能性があったが、K氏は何も言わずいつもの明るい笑顔で時差ぼけがある様子もなく朗らかに会話を続けていた。帰りは、US160号線を東進していった。来る時に停まっていたバンはラベッタ峠には既になかったが、峠を越して下っていくうちに左前方にオレンジ色の蛍光色ベストを着たサポート自転車らしき姿が見えてきた。そして道路右側にはシルバーのプリウスらしき車が停まっている。近づくにつれ自転車の前を走るカンペイさんがみえてきた。減速してゆっくり近づいた私たちは「カンペイさ〜ん、応援に来ました〜!」と叫んだ。カンペイさんは、私たちの方をみるなり「有難う〜。」少し合間を置いて「なんや、外人さんかと思ったわ。」と言って道路を横切って近づいてきてくれた。

 彼が芸人として何をやってきてたかを私はよく知らない。またスポンサーがつき、彼らがなにを感じ求めているかも知らない。しかし、カンペイさんが思うところを感じて、それをこのような行動として実際にとっていることが凄いと思う。ある程度の人なら一日だけ50キロ走ることは可能だろうが、それを外国の地を含めて持続して毎日走り世界を回ろうとすることが、単なる行動力以上の意志や気力の凄さを感じさせる。真っ黒に日焼けしたカンペイさんの顔、「冷たいで〜」と相手を気遣いながら握手に応じる彼の手。太陽光から眼を守るためにかけているサングラスの下にあるだろう彼の眼から気力がみなぎっている様子が、彼の身体全体から感じられる。芸人らしい冗談が飛び交い、はしゃぐように叫ぶ姿は、単なる芸人のそれというよりも、こんな行動をとっている人間の愛情表現が、たまたま芸人である彼の口調やスタイルを通して表れているように思えた。

 K氏はロスでの再会は果たせなかったが、ロッキーマウンテンでカンペイさんと再会を果たした。二人が固く握手をする姿は輝くようで、横で見ていた私さえその感動の渦の中にあった。今もこうやって私が書いている時に彼は走っていると思うと、感じるものがある。時間、というものの儚さと同居するそこに生きる人の素晴らしささえも教えてもらった気がする。そして、行動が導く力とは計り知れないポテンシャルさえも引き出してくれそうに思える。

(2009年4月)

  在米日本人写真家: 小池清通 - アメリカ合衆国コロラド州をベースに活躍する写真作家
                静岡県浜松市出身 1983年に渡米して以来アメリカ中西部コロラド州に在住

 
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写真作家 小池清通 コロラド事務所
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