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ひとりごと - テーマを決めること

 アメリカ合衆国コロラド州在住 在米写真作家が綴るひとりごとシリーズ [もくじに戻る]


 テーマを決めること

  写真撮影活動に限らず何事においてもテーマを決めることは大切なことだと思う。人生で言うならば目標を決めることと同じで、このテーマは継続的な流れのあるもので前に進めば進むほど奥の広がりが見えてきて、時には予期していなかった発見があったり、また自分自身の高いレベルの感性の成長や開化がある。その対象となるものは、自分がいいと思ったり説明できない力で引かれたりするものなど何でもいいと思う。撮影においては、持続性を持って撮り続けるならば、ただ矢鱈と飛びついたものでもいいかもしれない。それは、撮り続けているうちに何かが必ず見えてくるからである。また何気なく魅せられた対象物が、本当は必然的に自分にとって意味をもっているかもしれないからである。

 何年か前の夏にロッキー山脈の高山に登ってシロイワヤギ(マウンテンゴート)を撮影していた時にこんなことがあった。私は標高4300メートルを超える頂上近くで撮影をしていた時のことである。折りしも夕暮れ時で、暖かく柔らかいオレンジ色の光がシロイワヤギの身体を染め始めていた。その年の初夏に生まれた子供が、母親に寄り添いながら好奇心と警戒心で、一定の距離を保ちながらもじっとこちらをみていた。私はこのシロイワヤギとのその瞬間に溶け込もうとして、与えられた間隔よりも近づかないようにじっとして希薄な空気を精一杯吸いながらカメラを構えていた。その時に撮影と観光を、と思ってお連れしていた一人が突然叫んだ。 「頂上まで行きましょうよ。そんな、同じものばかり撮っても仕方ないでしょう。」

 撮影に限らず、人生も同じことが言えると思う。限られた時間の中で見れるものにも限界がある。また自分に与えられた命も永遠に続くものではなく、生きるための気力にも限界があると思う。その限界のあるものを如何に理解して有難く有効に使うかという点においても、写真撮影という活動は私に自己発見の場さえも与えてくれている。テーマを決めることの大切さは目標に向かうことだけではなく、そこに向かう持続的、継続的な前進プロセスにおいて自己発見もさせてくれる大切なものである。そしてテーマを絞ることによって感性が冴えてくる。この点においては薄利多大という商法の理念や理屈は当てはまらない。欲を出してあれもこれも、と動き回ると目の前にある「出会い」を見逃すこともある。「私は運が悪い」という人が本当にそうであるのかどうか分からないのと同じことかもしれず、はたまた、チャンスは与えられていてもそれに気づかずに不運だと思い込んでいるのかもしれない。

 前述のシロイワヤギの撮影は時間を見ては続けてはいるが、私にとっての生涯テーマ(ライフワーク)は砂漠・砂丘である。自然の懐は広くて深い。畏敬の念を持って訪れるものを手ぶらで返すことは絶対にないと思えるような出会いが続いている。同じ場所に何度も何度も通っていても一度も同じものを見たことがない。言い換えれば、私が想像できないほどの無限の表情を今後も魅せ続けてくれるということである。私の写真作家としてのチャレンジは、その魅せてくれるものを自分の感性を通して如何に捉える(撮らせてもらう)ことか、である。人が余り手をつけないテーマに私が引き込まれたのも、きっと意味のあることだと思う。だが、作品を発表して多くの方々に見てもらうことによって、自然が魅せてくれた感動をそれぞれの感性に訴える、そして伝えることができるのではないだろうか。

 「継続は力なり」という言葉は先人が残した素晴らしい教訓だと思っている。通い続け撮影を続けていることが「力」となって目に見えてきた私の人生における昨今の動きには、自分以外の「力」によるものが多い。それは私の活動に何かを感じて下さる人たちの志によるものである。一生懸命やっていれば、私にはない能力や知識のある賛同者たちが、前に進むための「場」を作って下さる。前進していると、次の発見を皆ですることができ、更に仲間の輪を広げることができる。テーマを持つことによって、人それぞれが自己発見から始まり、そこから多くの賛同の波が加わりながら前に進むことによって、思いもよらない素晴らしい喜びを多くの人と分かち合える「時」を得ることができると信じている。

 若いうちは好奇心が旺盛で何でもやってみたくなるし見たくなる。心身が落ち着いてくると、自分の能力がしっかりと見えてくる。そうすると出来ることと出来ないことが分かってくる。その時にどのように自分自身と歩んでいくかが与えられたものを活かせるかどうかにつながると思う。テーマを決めること。それは必要であり、また気力をもって持続すべき機動力でもあると思う。

(2009年3月)

 (在米日本人写真家: 小池清通 - アメリカ合衆国コロラド州をベースに活躍する写真作家。静岡県浜松市出身。1983年に渡米して以来アメリカ中西部コロラド州に在住する。)

 
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